地域連携PBL「片倉プロジェクト」

東京工科大学のサービスラーニング演習、2019年度後期の期間を使って行ったのが、大学最寄りの「片倉」というエリアを舞台にしたプロジェクトです。先述の由井プロジェクトでご一緒させていただいた社会福祉協議会さんのつながりからスタートしました。

演習として、学生たちと一緒に取り組んだのは2019年度の後期ですが、この話が始まったのは2018年度後期から。実に1年の期間をかけて作りあげてきました。

↑最終アウトプットとなったスマホ講座の様子


今回の主たる協働先である高齢者安心相談センター片倉さんにヒアリングにお伺いし、抱える課題とやりたいと考えていることを聞いた上で、それらをどのようにしてプロジェクトに落とし込むか、つまり学生たちに学びが起きるようにするにはどうしたら良いかを考え、ロードマップにまとめ、提案し修正しを繰り返しました。もちろん受け入れ側のスケジュールもありますので、そのタイミングを考慮し実現に至ったのが、2019年度の後期となりました。

片倉プロジェクトの概要をまとめると以下のようになります。

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概要
期間:10月下旬〜翌年2月上旬
課題:片倉エリアに住む高齢者にもスマホ使用による消費者被害が増えている
行動:高齢者向けにスマホ知識を高める講座の実施参加者

参加者:10名
内訳:応用生物学部:4名
   コンピュータサイエンス学部:2名
   メディア学部:2名
   工学部:2名
協働先:高齢者安心相談センター片倉 / 八王子市社会福祉協議会

*プロジェクトの日々の活動記録は学生たちがこちらのブログに記事を書いてくれています。
 東京工科大学学外活動ブログ 片倉プロジェクト
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上記、課題の欄にも書いてありますが、近年大きな問題になっている高齢者の消費者被害。オレオレ詐欺やワンクリック詐欺など、まだまだその被害は収まることを知りません。大学最寄りの片倉地域でも同様とのこと。この事態に対してなんとかしなくてはという悩みをお持ちでした。

これまで同センターはこのような被害に対するアプローチはできておらず(もちろん相談を受けることはやっています)、先手を打って、知識を身につけ、被害を未然に防ぎたいということでした。

また、その原因がスマホに対する苦手意識にあり、情報の取捨選択ができないことにあるため、スマホに慣れ親しんでもらえるようにしたいという理想もお持ちでした。


片倉プロジェクトの大まかなスケジュールは以下のとおりです。

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チームビルディング(メンバー再編成のため)

事前レクチャー(本プロジェクトの趣旨説明、企画立案、ビジネスマナーなど)


センターさんを交えての打ち合わせ(現状や課題、目的の説明、スケジュール感の共有)

企画立案作業(企画会議、マーケティングリサーチ、リサーチ結果分析、プレゼン準備など)

センターさんを交えての打ち合わせ(企画提案、フィードバックなど)

企画修正作業(企画会議、本番に向けての準備など)

センターさんを交えての打ち合わせ(本番前の最終確認、本番時の詳細など詰め作業)

リハーサル

本番(スマホ講座)

リフレクション(個々人で実施、新型コロナウイルスの影響で集まっての振り返りできず)

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本プロジェクトの特色としてあげられるのは、まず期間の長さです。これはアウトプットをスマホ講座に設定した時から懸念されていた「企画を作ることの難しさ」に起因します。

↑学内でのミーティングの様子。ホワイトボードを使ってアイディアをまとめます。

↑高齢者相談センター、社協の職員さんとも何度も打ち合わせを行いました。


スマホ講座の企画に携わったことがある方はわかると思いますが、スマホを題材とした学びのプログラムを作る際にもっとも難しいことは、その対象を決めることです。例えば、高齢者向けと一口に言っても、その想定とする対象の状況は千差万別とは言わないまでも、全く使えない(通話くらいしかできない)人、ある程度使える(アプリをインストールして使える素地はある)人、使いこなせる(普段からスマホを使って多種多様な情報を得ている)人、など、かなりのパターンに分かれます。

もちろん、今回のスマホ講座が対象とするのは初心者と言われる方ですが、その初心者の中にも差があります。企画段階で想定されたのは、講座の場でアプリをインストールするとなった場合に、その場でできるのかということ。アプリインストールにはIDやPWが必要なので、その場面でつまづいてしまうとそれ以後何もできなくなってしまいます。

そのため、本プロジェクトではマーケティングリサーチというタスクを追加しました。経営学を学んでいる学生たちではないため、深い部分まで行うことはしませんが、対象となるユーザー層がどんなニーズを持っているかを調べ、その結果を踏まえて企画を考える、という本来の企画立案の流れをより濃く追う形です。

リサーチの現場として、大学の近隣地域で行われている高齢者サロンのいくつかにお邪魔させていただき、サロン活動の合間を縫ってヒアリングを行わせていただきました。この際に、学生たちの工夫が見られたことは、当初ヒアリングする際の共通項目だけを作り、個々人でヒアリングを行うという方法をとっていたのですが、より共通性の高い情報を広範に集めるためにアンケートフォームを作成し、社協さんのネットワークを使って各サロンに配布するというやり方にシフトしたことです。

↑学生発案のアンケートフォーム

↑企画の立案作業も難航。


このようにして作り上げられていった今回の企画ですが、学生たちのもっとも深い気づきとなったのは「現場の想定」ではないかと思います。これまでは、参加者も決まっていて、どんな現場になるか過去に行った経験から想像できるという場合が大半でした。そんな中で、本プロジェクトのゴールとなるスマホ講座はセンターさんとしても初の試みであり、全てが試行錯誤の中で作られていったという経緯があります。

講座本番の様子はこちらのブログ記事からご覧いただけます。

このようにして作り上げられていった今回の企画ですが、学生たちのもっとも深い気づきとなったのは「現場の想定」ではないかと思います。これまでは、参加者も決まっていて、どんな現場になるか過去に行った経験から想像できるという場合が大半でした。そんな中で、本プロジェクトのゴールとなるスマホ講座はセンターさんとしても初の試みであり、全てが試行錯誤の中で作られていったという経緯があります。

そのため、学生たちとセンター側とで情報の齟齬や、イメージの共有ができにくいこともあり、企画立案に苦労する部分がありました。正直、それでミーティングの現場の雰囲気が微妙になることも……。

でも、予定調和でイメージした通りに物事が進むことなんて実社会ではほとんどありません(この経験を学生の頃にしておくことが大学から実社会にトランジションしていく際にとても大事だと思います)。限られた情報からどれだけクリアに現場をイメージできるのか、それに向けて企画を構築していく。ただ、現場が始まったらどうなるかはわからない。だからこそ、事前の想定を大事にしつつ現場に委ねるといった度胸、ある種の「開き直り」も大事になってくるのです。そんな部分についても気づきを得られているといいなと思います。

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東京工科大学で行っている地域連携PBLプログラムをこちらにアーカイブしています。


satohiroki-Lab.

ワークショップデザインをベースとしたAL、ファシリテーション、地域連携コーディネートを実践・研究しています。

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